VR動画のプレイヤーを開くと、「SBS」「TB」「180°」「360°」といった設定項目が並んでいます。手元のファイルがどれに当たるのか分からないまま適当に切り替えて、そのたびに映像が壊れて見える——VR動画を扱い始めた人が最初にぶつかるのが、ほぼ例外なくこの問題です。
厄介なのは、ファイル自体には「私はこの形式です」と書かれていないことが多い点です。プレイヤーは推測するか、ユーザーに選ばせるしかありません。ただ、見分け方には確立した手順があります。慣れれば数秒で判別できるようになります。
まず整理しておくと、これらの設定はまったく別の2つの軸を指しています。ここを混同していると、いつまでも当たりを引けません。
| 軸 | 設定項目 | 何を決めているか |
|---|---|---|
| 投影方式 | 2D / 180° / 360° | 映像が空間のどこまでを覆っているか |
| 立体視方式 | モノラル / SBS / TB | 左右の目に別々の絵を配るかどうか、配るならどう並べるか |
この2つは独立していて、掛け算で組み合わさります。「360°のモノラル」も「180°のSBS」もあり得ますし、「360°のTB」も存在します。プレイヤーで2箇所を別々に設定する必要があるのは、このためです。
前後左右と上下、すべての方向が映っています。振り返れば撮影者の背後も見えます。360度カメラで撮影された映像や、全天球の風景動画がこれに当たります。
この映像を平面に展開したものは正距円筒図法(エクイレクタングラー)と呼ばれ、世界地図と同じ形式です。横長の長方形で、上下の端に近づくほど左右に引き伸ばされて見えます。空や地面が横方向に伸びきった、あの独特の見た目です。
正面方向の半分だけが映っています。振り返っても何もありません。人が見る方向は限られているという前提で、そのぶんの画素を正面に集中させる考え方です。同じ8Kでも、180°のほうが正面の精細さは上になります。
平面で見ると、中央が膨らんだ円形に近い絵になります。
VR用ではない普通の動画です。VRプレイヤーでは、仮想空間の中に大きなスクリーンを置いて、そこに映す形になります。映画をゴーグルで見たいときなどに使います。
立体感を出すには、左目と右目にわずかに違う絵を見せる必要があります。VR動画では、1つの映像ファイルの中に両目分の絵を詰め込んでおき、プレイヤーが再生時に切り分けます。
| 方式 | 別名 | 詰め込み方 |
|---|---|---|
| SBS | Side-by-Side、左右分割、LR、3dh | 左半分が左目、右半分が右目 |
| TB | Top-Bottom、OU、上下分割、3dv | 上半分が左目、下半分が右目 |
| モノラル | 2D、平面視 | 両目に同じ絵。立体感はない |
モノラルの映像は立体的には見えませんが、360度の空間に包まれる感覚は得られます。360度カメラで撮った映像の多くはモノラルです。
ここからが実践です。3ステップで判別できます。
VRプレイヤーではなく、通常の動画プレイヤーやサムネイル表示で見てください。展開された状態の絵を見るのが目的です。
2つの絵はほぼ同じに見えますが、よく比べると微妙に視点がずれています。それが立体感の正体です。
実は、解像度の比率を見るだけでかなり絞り込めます。これは慣れると最も速い方法です。
| 解像度の例 | 縦横比 | 可能性が高い形式 |
|---|---|---|
| 7680×3840 / 5760×2880 / 3840×1920 | 2:1 | 360°モノラル、または180°のSBS |
| 7680×7680 / 3840×3840 | 1:1 | 360°のTB、または180°のモノラル |
| 7680×1920 | 4:1 | 360°のSBS(比較的まれ) |
| 3840×7680 | 1:2 | 180°のTB(比較的まれ) |
2:1のファイルが最も紛らわしい理由。 360°の全天球を1枚で収めると2:1になります。一方、180°の映像は1枚が1:1で、それを左右に2つ並べると全体でやはり2:1になります。まったく違う形式が同じ縦横比になるため、解像度だけでは決められません。
この場合は手順2に戻ってください。同じ絵が2つ並んでいれば180°のSBS、1枚の連続した風景であれば360°のモノラルです。
配信されているVR動画には、ファイル名に形式を示す記号が入っていることがよくあります。制作側の慣習によるもので、規格ではありませんが、参考にはなります。
| ファイル名に含まれる文字列 | 意味 |
|---|---|
_LR / _3dh / _SBS | SBS(左右分割) |
_TB / _OU / _3dv | TB(上下分割) |
_180 / _180x180 / VR180 | 180° |
_360 / _360x180 | 360° |
_MONO / _2D | モノラル(立体視なし) |
たとえば sample_180x180_3dh_LR.mp4 というファイル名なら、180°のSBSであると読めます。
設定を切り替えながら、見え方で判断する方法もあります。むしろ実際にはこちらのほうが早いこともあります。
| ゴーグルで見たときの症状 | 原因と対処 |
|---|---|
| 視界の中に同じ絵が2つ、小さく並んで見える | 立体視の設定がモノラルになっている。SBSかTBに切り替える |
| 絵が縦方向に間延びしている | SBSの映像にTBを指定している(またはその逆) |
| 手前にあるはずのものが奥に見える、目が疲れる | 左右の目が入れ替わっている。SBSとTBを入れ替えるか、左右反転の設定を確認する |
| 正面は正常だが、横を向くと映像が引き伸ばされて途切れる | 180°の映像に360°を指定している |
| 振り返ると背後にも映像があるが、極端に歪んでいる | 360°の映像に180°を指定している |
「奥行きが逆」は見落とされやすい症状です。 映像そのものは正常に見えるため、間違いに気付かないまま見続けてしまいます。しかし脳は左右の情報の矛盾を処理し続けることになり、短時間で強い疲労や酔いを引き起こします。VR動画を見ていて理由もなく疲れる場合は、まずここを疑ってください。
3dh、LR、TB、180、360 がないか確認するOctaVRは、180°/360°/2Dの投影方式と、SBS/TBの立体視方式をそれぞれ独立して切り替えられるAndroid向けのVR動画プレイヤーです。ゴーグルを装着したまま設定を変えられるので、「かぶる、違う、外す、直す」の繰り返しから解放されます。
首の動きだけでメニューを操作できるハンズフリー機能があり、下を向くと操作パネルが現れます。視野角やIPDの調整、ゴーグル内でのスマホの位置ずれを補正する機能も備えています。8K動画のハードウェア再生に対応し、カクつきや音ズレが出る場合の変換機能も用意しています。無料で試せます。
再生そのものがうまくいかない場合は、スマホで8K VR動画がカクつく・音がズレる原因と対処法もあわせてご覧ください。